
こちらの記事は「ふみりん通信」vol.5のWeb版です。

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山縣 清志 氏


- 第8代目文京区倫理法人会会長(2009~2011年)
- 文京区倫理法人会相談役(2022年現在)
家庭倫理の会足立区支部長
1959年に大学卒業後、山縣佐兵衛商店に入社。1967年に先代・佐兵衛氏死去に伴い、代表取締役社長に就任。東京大学を主として㈱リコー、㈱キャノン等の事務機を販売。趣味の囲碁を通して各界の代表者と交遊を深め、販路を開拓。2015年に会社を清算。
1988年に入会、倫理歴は34年。1989年には家庭倫理の会にも入会。2009年より文京区倫理法人会会長を2期務め、2011年より文京区倫理法人会相談役。また、2018年より家庭倫理の会足立区支部長も務め、現在に至る。
――法人会に入会した1年後、さらに家庭倫理にも入会して純粋倫理を徹底的に学んで実践した山縣さん。会員さんから「顔が穏やかになった」と言われ、ご自身の変化に気づいたそう。そんな山縣さんが倫理を学んで一番よかったと振り返るのは、夫婦関係が劇的に改善したこと。初めて栞を見たとき、山縣さんが真っ先に目に留めたのが「第五条夫婦対鏡」だった。これまで“やんちゃ”をしていた自分を反省して、奥様との関係を見直すことを決意したという。
大いに反省しましたよ。よく女房は今まで黙って我慢してたなと。家庭倫理の講演会での宇都進一郎先生のお話で「奥さんにおはようございます。今日一日よろしくお願いします、と挨拶しなさい」と聞いてそれを実践し始めた。最初は私が出かける時間も早くて女房は寝てたから、枕もとで挨拶をしていた。それが段々と反応があって、夫婦関係も穏やかになった。今では朝起きて朝食の支度をして、仏壇にお線香をあげて、女房に挨拶をするようになってるね。そのときに「弘子さん、愛しています」っていつも伝えています。
――その後、山縣さんに8代目会長の話が来たが、奥様との時間が減ることを懸念して受けるのをためらっていたという。ところが、最後にその背中を押したのが、法人会に移籍する前の小林桂子名誉法人アドバイザーだった。学生時代から生徒会長や野球部のキャプテンに推されることが多かったという山縣さん。仕事でも先代から会社を引き継ぎ、事務機の販売会では百何十社以上の業者の中で会長を、事務機器業界全体では副理事長も歴任した。そんな山縣さんがトップに立つときに一番大事にしていたのは「コミュニケーション」だった。
それまで私は「会長は受けない」と言ってたんだけど、そこにセミナーで講師をお願いした小林桂子先生がいらして「山縣さんやんなさい!」って言われたの(笑)。でも受けたら(当時会長だった)渡辺さんも泣いて喜んでくれて、これで良かったんだと思った。その数年後、小林先生が家庭倫理から法人会へ移籍する際も以前から親交もあったし、「山縣さんが文京区にいるから」って文京区に入会してくれた。
こういう縁はコミュニケーションが大事。そして栞にもあるように「人を喜ばせること」。あとは、当時のうちの商売は、東京大学御用達として東大を相手にしていた。当時の東大はとても権威のある機関で、商売をするにあたって先代の山縣佐兵衛が「どうすればそういう人たちと関係が築けるか?」と考えて、囲碁・謡曲・茶道の趣味の世界で関係を築こうと決めたの。私も囲碁は学生時代からやっていたから、趣味を通じて人間関係を築いていった。趣味の中で付き合うと、身分とか肩書は関係ないんですよね。心からの形でお付き合いできる。
――現在、文京区が「東京ガーデンパレス」でモーニングセミナーを開催できるのも、山縣さんのコミュニケーション力で築いた人間関係がきっかけとなった。様々な縁を文京区に運んでくれた山縣さん。コミュニケーションや人との関わり、倫理の実践で大事にしているのが、趣味の囲碁を通じて学んだ姿勢だ。
前の会場は住所が千代田区で、文京区に移りたいとなったんだけど、すでに(東京ガーデンパレス使用は)何度か断られていた。東京ガーデンパレスの運営は私学振興事業団というところがしていて、ちょうどそのころ私が仕事で関わった人で、東大の部長や他の大学で事務局長をしていた人から年賀状が届いたの。そこに「この事業団に移った」と書いてあった。それですぐに連絡を取って事情を話したら、快諾してくれて。

こういう囲碁でいうところの<“いい”加減さ>というのは、一言ではとても言い表わせないんだけど、コミュニケーションでも実践でもやっぱり大事なんだよ。1+1が2になるとか、何が良いとかハッキリわからないんだけど、その手を打つことで将来それがすごく役に立ってくる…そんな感覚を“いい”加減という。何かをするときに“正解”を求めすぎない。
それから、もし何か手を打つときに一時的にマイナスがあっても、やっぱりこうと思ったことは貫き通す。そしたらそれがプラスになることも出てくるわけ。これは囲碁の「捨て石」という考え方。石を取られるとマイナスになるんだけど、それを惜しんでいるといいことがない。
碁の格言に「子(し)を棄てて先を争え」というのがある。子は自分の打った「石」。で、先を取れというのは先手。計算はできないんですよ。何かを得るために、捨てるときは潔く捨てる覚悟。それがあれば、必ず何かにつながりますよ。
――現在、山縣さんは家庭倫理の会足立区支部長を務めながら、認知症の奥様と一緒に暮らしている。“認知症”と聞くと、あまり明るいイメージを持たれないことが多いが、山縣さんは奥様との関係をこう語る。

確かにこっちの言うことを聞かないこともある。それでもね、行動が素直なんですよ。私の姿が見えないと心配して探し回ったり、犬がいたら「かわいい!」って素直に言う。こないだは、お年寄りが歩いてるのを見て「大丈夫ですか~?」ってお世話をしようとして。自分がやってもらいたいくらいでしょ?って思うんだけど(笑)。でもね、こういう素直な気持ちが自然に出てくるんだから、こういう病気も一面ではいいなと。会話もできるけど、愚痴っぽい話は伝わらないね。素直な純粋な言葉なら通じる。口でも「愛してる」って、しょっちゅう言ってるけど、本当に心からそう伝えれば、相手もいい方に変わっていくんです。そばにいると楽しいですよ。やっぱり夫婦は「明朗愛和」が大事ですね。
――“いい”加減の姿勢から生まれる唯一無二のゆとりある存在で文京区を穏やかに包んでくれる山縣さん。そして、深い愛情が伝わってくる奥様との明朗愛和の関係は、夫婦の鑑であり、多くの会員さんの憧れです!
\歴代の文京区会長に調査/
“山縣さん”を一言で表すとしたら、どんな人ですか?
- 「真面目一徹な正直者」(瀧住寿彦東京都相談役/文京区3代目会長)
- 「囲碁とお酒と奥様をこよなく愛する人」(志村唯夫
相談役/5代目会長) - 「真面目で実直な人」(島田実東京都キャリア委員長/9代目会長)
- 「笑顔が似合う寡黙なジェントルマン」(馬屋原康平相談役/10代目会長)
- 「ピュアッピュアな愛妻家」(寺石ゆか東京都キャリア副委員長/11代目会長)
- 「愛妻家で皆に愛される人」(宮田剛志現会長/12代目会長)
【Question03】
モーニングセミナーてなぜ「歌」を歌うの?
モーニングセミナー(以下「MS」)の始めに⻫唱する「倫理法⼈会の歌」。なぜ歌うのか?と、考えたことはありますか?今回は「倫理法⼈会の歌」が作られた時の様⼦を実際にご覧になっていた⼩林桂⼦名誉法⼈アドバイザーのお話から歌についてひも解いていきます!

まずあの詞、⾔葉をよく噛みしめて聴いてください。まさに「倫理」そのものが書いてあるんですよ。あの節をつけてくれたのは小野崎先生という方で、『夢かぎりなく』が出来上がるとき、もうタップをたくさん踏んで(足でリズムを取って)全身で歌を感じながら完成させたの!私は実際にその様子を目の当たりにしたんだけど、感動して涙が出てきたくらいの迫力だったの。
こういう経験があるから、私は魂が⼊っている⾏動旗に向かって、⾔葉をかけるようにして歌っています。ある時、他会での講話のときにそうやって歌っていたら、その会の会⻑さんが私の姿に感動したらしくて会⻑挨拶で「今朝、歌を歌うときから僕はもう(感動で)胸が張り裂けそうだった!」って話してくれました(笑)。
あの歌には、経営者にとっても一番大事なことが入っています。家庭倫理には歌はないけれど、毎朝学びの場があるから自然と学びも深まる。一方で、法人会のMSは週に1回。経営者の方々は毎朝というのは時間的にも厳しいけれど、だからこそ倫理の学びをしっかり深められるように「倫理法人会の歌」があるんだと思いますよ。

倫理の一番の基礎である「夫婦」のこと、「親となる」こと、「日本の国に生まれた」こと・・・一つ一つの⾔葉の意味を噛みしめて、ぜひ心を込めて歌ってみてください。
倫理の基礎と熱い想いが込められている歌。ぜひ次回MSでは、桂⼦先生のように思いを馳せながら歌を味わってみてください。新たな気づきが湧いてくるかもしれません!
宮下しのぶ事務長・秋元慎介副事務長・細淵さやか副事務長・五十嵐悠太幹事・大西早百合幹事・瀬川千香子幹事・高橋美智敏幹事・小鮒卓哉幹事・武内美里会員
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- ふみりん通信vol.5【2022年5月】
- ふみりん通信vol.4【2022年3月】
- ふみりん通信vol.3【2022年1月】
- ふみりん通信vol.2【2021年9月】
- ふみりん通信vol.1【2021年5月】